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水産資源大国、ノルウェー。生田さんから「サスティナブルシーフードシティ豊洲」構想を聞いた大使館の反応は?

毎日食卓にタラやサバが並び、日本へのサバの輸出に力を入れているノルウェー。皆さんもノルウェーサーモンなんてのを耳にしたことがあるかもしれませんね。そんな水産資源が豊富なノルウェーですが、漁師さんは決して魚を獲りまくっているわけではないんです。

獲りすぎて魚が減らないよう、定められた漁獲枠のなかで大きい魚だけを獲り、子どもの魚は獲らずに大きくなるまで待つ。つまり、漁獲規制です。水産資源を保護しながらでも、大きくて立派な魚を輸出できています。

ノルウェーはこんな漁獲規制があるのに、水産業がめちゃくちゃ活気に溢れているんですよね。日本では考えられません。凄まじい勢いで水産業の衰退が進行している日本。これをどうにかできないか。

2018年7月上旬、まぐろ仲卸・鈴与の生田よしかつさんがノルウェー王国大使館を訪問。魚の大切さを豊洲から発信し、危機的状況にある日本の水産資源を持続可能なものにする「サスティナブルシーフードシティ豊洲」の構想をお話してきました。同行した筆者がその様子をお伝えしたいと思います。

 

 

豊洲市場の開場、いよいよ3ヶ月後に迫る

築地市場が移転し、オープンを2018年10月11日に控えた豊洲市場。安全対策工事がすべて完了したことが7月12日付で報じられています

汚染が発見された土壌は何年も前に行われた土壌汚染対策によって取り除かれ、入れ替えられたキレイな土の上に豊洲市場は建っています。

そんななか、直接飲むわけでも触れるわけでもない地下水の汚染が指摘され、市場の設備を増強する必要などないのに追加対策工事が行われました。それが今回完了が報道された安全対策工事です。

小池都知事は「念には念を入れて追加対策工事を実施した」と言えば済むところを、豊洲市場がまだ汚染されていると無理やり決めつけ、「追加対策工事は必要だった」とする事実を作り上げることで世間からの承認を得たい考えです。

その影響もあって、豊洲では今日でも風評被害は続き、SNS上でも未だに悪質な発言を目にします。

 

 

水産資源の保護を訴える街、魚に優しい豊洲

風評被害の払拭はまさに豊洲の課題でありますが、“安全です”と繰り返し言うのは、逆に風評を思い出させることになり、いつまでたっても悪いイメージが表に出てきて逆効果かもしれません。

そこで仲卸業者の生田さんは何か違う方法で風評をなくせないかと考え、豊洲から水産資源の保護を訴える「サスティナブルシーフードシティ豊洲」構想を私たち豊洲住民に語ったのが2018年5月28日のことでした。

→ コンビニで焼き魚が買える背景にある漁業の衰退と、日本初のサスティナブル・シーフード発信地に豊洲が選ばれた理由

サスティナブルシーフードとは、徹底された資源管理を経て認証を受けた水産物(持続可能な水産資源)を指します。

どうして豊洲がサスティナブルシーフードシティになろうとしているんだ?という声があるのでお答えしておきます。その答えはとてもシンプルです。

①豊洲市場は世界一の魚市場
②都心に近いながらも水辺のある街
③人口増加が著しく、子どもが多く、水産資源教育を実施するに最適

海に囲まれている日本はどこでも魚が獲れると思っている人も多いはず。水産業の厳しい現状を知らない大人が大半です。それを裏付けるかのように、先日投稿した記事の反響は凄まじいものでした。

そして、7月上旬。私たちは水産資源の保護で日本の何歩も先を行くサスティナブルシーフード先進国のノルウェーに協力を仰ぐため、ノルウェー王国大使館を訪れたのです。

対応してくださったのはノルウェー王国大使館のグンバルさんと窪田さんです。

 

 

前例のあるノルウェー、魚に触れ大切さを知る活動を豊洲で

魚の大切さを自分の子どもに話せる親御さんはどれだけいるでしょうか?どの魚が日本の周りで獲れるのか、どうやって獲るのか、どのように調理するのか。その魚は孵化から大人になるまで何年かかるのか。何歳になったら卵を産むのか。

現在、魚嫌いだったり、親が魚をさばけなかったりが原因で、食卓に魚が並ばない家庭もあると聞きます。要するに、日本で水産資源を保護しようと思ったら、魚への知識を深めることからスタートしないといけません。いたずらに漁獲を規制すると決して理解してもらえないからです。

北欧のノルウェーは乱獲からニシンが激減した悲しい過去があります。このままではいけないと、国を挙げて資源管理、漁獲規制に取り組んだことによって、現在は水産資源大国と呼ばれるまでに復活・成長しました。

「こういったノルウェーの話をし、子どもたちに魚の大切さを知ってもらう。サスティナブルな商品を作って販売することで、大人も子どもも水産資源に関心を持ってもらう。こういった活動がある程度盛り上がってくれば行政も動いてくれるのでは」と生田さんは考えています。

ノルウェー王国大使館のグンバルさんはつい最近も秋田の学生たちにノルウェーの水産資源保護について語ってきたそうです。

「子どもたちが魚に触れる機会がないのは問題。豊洲の子どもたちにもぜひお話したいです」

と言い、魚の知識を学んだり、親子で魚に触れたりできる機会を設けたいとお話してくださいました。

(ノルウェー王国大使館のグンバルさん)

また、生田さんは「豊洲の子どもたちをノルウェーにホームステイさせて、より身近にサスティナブルシーフードを体験してほしい」と言います。グンバルさんは「とても興味深いですね」と深くうなずいていました。

日本にいたらなかなかできない体験ですし、ぜひ我が子をノルウェーへ行かせたいと思うママさんパパさんも少なくないでしょう。

 

 

味わって楽しみながらサスティナブルを学んでいく

サスティナブルシーフードシティ豊洲の構想はゆっくりながらも着々と動いていて、実際に豊洲のベーカリーショップにてサスティナブルなサバを使った「サババーガー(さばサンド)」を販売する計画が進行中。

ただ、現状の日本の漁業は資源管理されていませんから、中大型のサバが減って獲れなくなり、仕方なく小型のサバを大漁に獲っています。サバの小型化と不漁が深刻化し、大きなサバはノルウェーなどから輸入しているのが現状です。こんなことでは当然、日本の漁業がサスティナブルをうたうことはできません。

そこでサスティナブルを意識してもらう、知ってもらうきっかけ作りのためにも、まずはノルウェー産のサスティナブルなサバを使用したサババーガーを作ろうと計画しています。

さらに、サスティナブルシーフードシティ豊洲では周辺の海でわかめや海苔の養殖が可能かも模索中。豊洲の子どもたちが自分でわかめや海苔を作り、それを名物にできたらいいなと。なんでも楽しむって重要じゃないですか。初めての体験を豊洲でできる。自分の街でできるって、とてもワクワクするはずなんです!

(『ノルウェーほど住むことに適した環境はない。それはサバにとって』)

 

 

グンバルさん、イメージを変える構想を評価

こういった構想を否定する声はきっと多いと思います。しかし、他で成功した例と同じことを豊洲でやっても仕方ないし、どうせなら新しいアクションを起こして豊洲の盛り上げにつなげたい。

豊洲が日本初のサスティナブルシーフードシティーとなる構想を聞いたグンバルさんは

「生田さんの説明で面白いと思ったのが、豊洲の概念を変えるといった点です。いろいろな人へインスピレーションを与える。良いとか悪いとかではなく、豊洲でこういうことができるんだと発信するのが大事です。ノルウェーは乱獲でニシンが獲れなくなった失敗を経験しましたが、漁業を改革し、復活させることができました。ぜひ私は皆さんの前でそういったノルウェーの経験をお話したいです」

と、快くご協力していただけることになりました。なお、これはノルウェー政府が、とか、国が、とかではなく、あくまでも非公式の協力とはなりますが、ノルウェー王国大使館から熱い言葉をいただけたことに私たちは非常に嬉しく感じました。

 

 

早速、ノルウェー産のサバが豊洲に!

ノルウェー産のサバを使ったサスティナブルな商品。7月15日(日)に開催された「豊洲市場魅力発信フェスタ 第2弾」では豊洲のパン屋さん「ペル・エ・メル」と「東卸組合」がコラボし、まさに資源管理を経て築地に届いたノルウェー産のサバを使った「さばサンド」が登場しました。

海からサバがいなくならないようにしっかりと限られた漁獲枠のなかで水揚げされたサバですから安心。大人気となり、早々にブースからはさばサンドがなくなっていましたね!

筆者も買っていただきましたが、肉厚な塩サバからはおいしい脂がしたたり落ち、とてもジューシー!窯焼きのパンとの相性はぴったりで、美味しかったです!

そう遠くない未来に、豊洲のパン屋さんではこのさばサンドが並ぶはずですので、この日食べられなかった方も楽しみに待っていてください。

 

 

サスティナブルシーフードシティ豊洲は動いてます

前回の記事を公開後、実にたくさんの方にご覧いただき、たくさんの反響がありました。居酒屋やコンビニで売っているホッケやサバの大きさ、出処など、これをきっかけに意識していただけるようになったのではないでしょうか。

その後、(記事にはレポートしていませんが)新豊洲のお店でテラス席を貸し切ってサスティナブルについての勉強会を兼ねた会合が行われました。飲みながら、ワイワイ語りながら、結果的に楽しく知識を深められる内容となり、また、水産商品を取り扱う企業さんや教育機関の方々ともお会いでき、サスティナブルシーフードシティ豊洲の構想に賛同していただける方々が増えてとても嬉しく感じました。

今後もサスティナブルシーフードシティ豊洲の実現に向けて、ゆっくりではありますが活動を前に進めていきますので、温かく見守っていただけたら幸いです。

生田さんや東京海洋大学の勝川俊雄先生をはじめとメンバーで管理するFacebookページの「サスティナブルシーフードシティ豊洲」では応援してくれる一般の方々を広く募集しています。皆さんの「いいね!」をお待ちしております。どうぞよろしくお願いいたします。

→ Facebookページの「サスティナブルシーフードシティ豊洲」

→ コンビニで焼き魚が買える背景にある漁業の衰退と、日本初のサスティナブル・シーフード発信地に豊洲が選ばれた理由