開店・閉店

創業70年超の「たつみチェーン」が閉店へ 衝撃の八百屋からはじまり豊洲民を支えてきた老舗スーパー

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70年以上もの間、人々の食卓を支えてきたスーパー「たつみチェーン 豊洲店」。

2024年10月31日(木)の営業を最後に、残念ながら閉店することが決まりました。

たつみチェーン豊洲店の店長であり、有限会社村松商店の代表である村松義康さんからこの話を聞いたのは9月に入ってすぐ。

配達前の忙しいなか時間を割いていただき、お店の成り立ちから閉店までの経緯をお聞きしてました。

70年前、夜逃げした店を引き継いだのが始まり

たつみチェーンの誕生は、村松さんのおばあさんの代まで遡ります。

1950年代、おばあさんは木場公園や清澄庭園のある江東区三好で賃貸業を営んでました。

ところが、店舗を貸していた八百屋(借り主)が突然の夜逃げ。

大家であるおばあさんのところへは、債権者が支払いを求めてきたり、八百屋の営業再開を求める常連客がやってきたりしたのだそうです。

そこで、おばあさんは自分が八百屋をやろうと決意。市場では夜逃げした八百屋の名前を使って、買い出しなどをしていたのだとか。

その後、埋立地である豊洲の土地が一般入札で払い下げとなり、その第2期の募集で現在の場所(豊洲4丁目6-2)を購入。豊洲に八百屋を移転しました。

お醤油はないの?あれはないの?と、野菜以外の要望をいただくことが多くなり、いろいろな商品を販売しても売れるようなお店に。ちなみに、隣で営業していたのは魚屋。

1960年代に入ると、隣の魚屋が高齢を理由に閉店するというのでその土地を買い取り、八百屋と魚屋のスペースを併せてスーパーへと改装しました。

当時、お客様が自由に商品と取ってカゴに入れ、出口でまとめて精算する販売形態は珍しく、「セルフサービスの店 むらまつ」と謳っていたのが特徴的で、ずいぶん話題になったのだとか。多くのスーパー関係者が視察にやってきて、ニュースにもなりました。

青果組合の組合員のなかで同じように業態変更するお店も増え、「たつみチェーン」が誕生したのはそのあとです。

「たつみチェーン 豊洲店」が誕生。そして、1970年代には、レジ製造メーカーである日本ナショナル金銭登録機(現:日本NCR)と通産省によるPOS実験をたつみチェーン加盟店で実施するなど、先進的な取り組みが続きます。

1990年代にお店を建替え、現在のビルを新築。1階が店舗で、2階は惣菜の製造フロアとなりました。

豊洲住民の暮らしを見つめてきたスーパー

長い間この場所で豊洲の発展を見続けてきたたつみチェーンですが、昔はどんな客が多かったのでしょうか?

村松「豊洲が今のような高層ビルやタワーマンションばかりになるずっと前は、石川島播磨重工業や日新製糖、巴組鐵工所の工場がありましたから、工場の社宅に住んでいるお客様がよくいらしてくれました。

スーパーといったらウチくらいでしたし、それに誰もが苦しい時代でしたから、傷んだ野菜を値引きして並べると、お金のない人たちはそれをお礼を言いながら喜んで買ってくれたんです」

村松「東北出身で豊洲に来た方も多くて、春になって山菜を置くとそれを見て懐かしがっていましたね。逆に、ここの果物はハズレがないよねと、今でも品質の良さを褒めて買っていくお客様もいらっしゃいますよ。本当にありがたいです」

閉店理由は街の変化ともうひとつ

たつみチェーンは江東区内6ヵ所の消防署や児童館、キッズクラブなどにも食材を届けていて、決して売上は悪くなかったとのこと。

閉店する理由はいったい何なのでしょうか。理由を聞いてみました。

村松「閉店理由のひとつは、昔と違ってずいぶん豊洲の街が変わりこの数年で周りにスーパーが増えましたし、たつみチェーンが必ずしも住民にとって必要な存在ではなくなったのが大きいですね。

豊洲4丁目にはライフができ、隣の東雲には大きなイオンや東武ストアとオーケーもできましたから、もうここらへんで(閉めても)いいじゃないかと」

参考:豊洲にあるスーパー8店舗(2024年9月現在)

たつみチェーン

文化堂

サカガミ

あおき

成城石井

ダイエー

ライフ

まいばすけっと

村松「もうひとつの理由が、肉屋と八百屋とも相談して、三者が納得して閉店することにしました」

どういうことなのかよくわからなかったので詳しく聞いてみると、

村松「先代である父の方針なんですが、従業員の賃金上昇やヤル気を持たせるために、精肉部門と青果部門はあえてウチでやらず、テナントを入れて各自で稼いでもらう手法を採用しているんです。どちらも頑張った分だけ稼げるように。そのかわり、売上の一部をテナント料でいただく感じでした」

なるほど。店内の精肉コーナーと青果コーナーは別の業者が担当されているんですね。

村松「周りにスーパーが増えるなかで次の手を考えて当然リニューアルも考えました。ただ、もしリニューアルしたらあと最低5年は営業を続けることになるでしょう。実は肉屋も八百屋も75歳を超えていまして・・・。あと5年頑張れますか?と話し合ったところ、じゃあこのあたりで区切りをつけようと。三者の折り合いがつき、納得してお店を閉めることにしたんです」

閉店の話を伺ったのは、商店街の役員さんもまだ4〜5人しか知らなかったときだったので、記事にするのは10月になってからねと釘を刺されていました。

ただ、店頭ではすでにポイントカードの廃止がアナウンスされていますので、もしかして閉店するのでは?と勘づいていた方もいらっしゃったかもしれませんね。

この場所に新たな展開が・・・

たつみチェーンの閉店後はどうなるんでしょうか?

村松「この閉店が豊洲4丁目の再開発って思われるかもしれませんけど、再開発はそんな近い話じゃなくまだまだ何年も先のことなので、10月で閉めて、11月に片付けて、しばらくは貸します。

ウチは賃貸業もやっていますから、ここを飲食店に貸すことにしました。まだちょっとどこかは教えられないんだけど・・・」

と、たつみチェーンのあとは飲食店になることが濃厚に!驚きました。

村松さんの口からは聞けませんでしたが、他の商店街関係者の話によるとどうやらすでに事業者は決まっていて、皆さんよくご存知の飲食事業を手掛ける某社が借りることになったそうです。おそらくオープンは来年の早春ごろでしょうか。

* * *

豊洲に引っ越してきたばかりの方はわからないかもしれませんが、たつみチェーンは間違いなくこれまで多くの方々が利用してきたスーパーです。

商店街のスタンプラリーやハロウィンイベントで足を運んだり、小学校のお店屋さん紹介やテレビ番組でもよく登場していましたね。閉店を寂しがる声はきっと多いのではないでしょうか。

70年にわたって豊洲の人々に生活必需品を提供してきたたつみチェーン。今までありがとうございました。営業最終日は2024年10月31日(木)です。

(たつみチェーン豊洲店店長 村松義康さん)

 

【たつみチェーン 豊洲店】
※2024年10月31日で閉店

■営業時間:9:00〜22:00
■定休日:日曜日
■電話番号:03-3531-5894
■住所:東京都江東区豊洲4-6-2 たつみBM101

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