再びこの東京で熱いスポーツの国際大会が開催されます!
きこえない・きこえにくいアスリートたちが世界各国から東京に集まり、スポーツで金メダルを競い合う「東京2025デフリンピック」です。
2024年11月15日(金)・16日(土)にはアーバンドック ららぽーと豊洲を会場に、デフリンピック1年前イベント、TOKYO FORWARD 2025「東京2025デフリンピック 1 Year To Go !」が開催されました。
地元豊洲での大きなイベントとあって筆者は2日間取材を申し込み、レポートすることにしました。
・・・と、ひとりで取材したためさすがにイベントの全部はご紹介できないのですが、これをご覧いただいて少しでもデフリンピックを応援するきっかけになったらとても嬉しいです!
(最後にはボランティア募集もあります!)
初開催となる東京2025デフリンピックを応援
デフリンピックとは?江東区では3会場で実施!
デフリンピックとは、きこえない・きこえにくいアスリートのための国際スポーツの祭典。オリンピックやパラリンピックのように、さまざまな選手たちが感動を与えてくれることでしょう!
なんと、今回で100周年を迎えるデフリンピック。しかも、日本が開催地となるのは初めてのことであり、大きく盛り上がると良いですよね。
「東京2025デフリンピック」の開幕日は2025年11月15日。
豊洲周辺では有明テニスの森、東京アクアティクスセンター、若洲ゴルフリンクスが競技大会に決まっているそうなので、大会が始まったらぜひ観戦しに行きたい・・・!
1年前イベントのようすを2日間たっぷりレポート!
そんなデフリンピックの開催を1年後に控えた2024年11月15日と16日、ららぽーと豊洲でデフリンピックを盛り上げるためのイベントTOKYO FORWARD 2025「東京2025デフリンピック 1 Year To Go !」が2日間開催されました。
登壇したアスリートたちの貴重なお話を聞きながら、わずかにですが手話を覚えることができましたし、筆者自身このイベントに参加して本当に良かったです。
いきなり取材の裏話をすると、10月・11月は豊洲で開催されるイベントがめちゃくちゃ多くて、事前の告知記事を書くのも、当日に取材しに行くのも大変で大変で・・・(笑)
ステージイベントの前後や時間の合間を縫って他のイベントにも足を運ぶ、なんてことをしていましたよ。
長濱ねる「デフリンピックが東京で見られる貴重な機会」
オープニングセレモニーでは、デフ水泳の茨隆太郎選手、デフ陸上の岡田海緒選手、デフ陸上の山田真樹選手、デフ卓球の亀澤理穂選手の4選手やゲストの皆さんが登場。
応援アンバサダーを務める長濱ねるさんは、「この1年活動をしてきてデフリンピックは面白いと思いました。間近で見られるのは貴重な機会ですし、ぜひ盛り上げていきたいです」とコメント。
これからもデフリンピックイベントのさまざまなシーンでお見かけしそうですね!
また、このオープニングセレモニーのなかではデフリンピックの金メダルデザインが初公開。
全国の小学校、中学校、高校生たち8万票以上の投票により、4万票以上を獲得したこちらのデザインに決定しました。
メダルデザインのコンセプトは“みんなで羽ばたく”だそうです。
拍手は手を叩かず、“キラキラ”で
ステージでは選手たちによる手話レッスンコーナーもあり、デフ卓球女子の亀澤理穂選手が登場。
ろう者は拍手の音がわかりません。そこで手話で「拍手」する方法を教えてくれました。
拍手はパチパチパチと手を叩くのではなく、手の平で“キラキラ”と表現すればそれが拍手に!音がきこえなくてもわかるように“キラキラ”で拍手を贈りましょう。
また、「ありがとう」はウルトラマンのスペシウム光線のようなポーズ・・・というのはドラマなどでよく見かけますし、みなさんもよく知っているかもしれませんね。
実はこれ日本独特の手話でして、外国人には通じません。世界共通のありがとうは“投げキッス”に近い動き(手をあご前から離す動作)をすると良いですよ。
イベントが終わって2日経過し、自宅でMacのキーボードを叩いている今でもこうやって覚えているわけですから、イベントに参加した甲斐がありました(足を運ぶって本当に大事なんだなとつくづく感じさせられます)。
そんな亀澤選手は囲み取材の際に「デフ卓球の選手は耳がきこえないので、ボールが台に当たる音がわかりません。目でボールの回転を見たり、相手の動きを見たりしながら、ときには勘でやることも。それがまた普通の卓球と違って面白いんです!」と笑顔で教えてくれましたよ。
この明るさも亀澤選手の持つ魅力のひとつです。
門秀彦さんの手話アートにミドリーズも参加
次のステージでライブペインティングによる手話アートを描いてくれたのは人気アーティストの門秀彦さん。
ご両親がろう者で子どもの頃から手話のある家庭で育った門さんは、手話を取り入れた温かみのある絵を、それも身近にある段ボールでつくってしまうアーティスト。
この日は、子どもたちに人気のミドリーズと長濱ねるさんといっしょに、デフリンピックを学ぶ講座と同時進行でアートを描いてくれました!
門さんは「デフリンピックや今のダンスの手話を描きました。だいぶ隙間が空いているので、みんなで絵を描いていきましょう。大人も子どももろう者も関係なくみんなでつくれる。自由と自由がぶつかり合うのが面白い。描いたあとに自分の絵がどうだったのかを話し合って仲良くなれるのが良いなと」
と、みんなで描くアートの楽しさを語ってくれましたよ。このあとブースにて一般の方も参加できるようになっていました。
茨選手「応援の想いは伝わる。タオルを振り回して」
「きこえないってどういうこと?川俣先生と茨先生と学ぼうデフリンピック」講座では日本財団職員の川俣郁美さんと茨選手がミドリーズにデフスポーツやデフリンピックの魅力を伝授。
子どもならではのユニークな質問に思わず笑みがこぼれる場面もありました。
川俣「記念すべきデフリンピックの100周年が東京で開催されるんです!70〜80カ国の地域から約3,000ものたくさんの選手が東京にやってきて21競技が行われます!なんと、こちらの茨選手は19個もメダルを持っているんですよ!」
というと、ミドリーズだけでなく会場からも驚きの声が。
そして、「どうやったら選手に応援を届けることができますか?」というミドリーズからの質問に茨選手は「声援はきこえないけど想いは伝わります。あとはタオルを大きく振り回したり、選手の名前を書いた紙を大きく掲げたりしたら、応援が伝わります」と返答。
会場からの「がんばれ」の手話を受けて、茨選手は「みなさんの応援をパワーに変えて頑張ります!」と早速勇気づけられたようすでした。がんばれ!茨選手!
そして、筆者が個人的にこのステージのなかで印象に残ったのが川俣さんの言葉です。
「家ではインターホンがきこえなくて生活が不便。気づくと不在票が入ってる。でも、かわいそうって思ってほしくないです。私たちは工夫して何でもできています。インターホンは光のランプでわかるし、最近では文字の出るディスプレイもあります。みんなで工夫してみんなが住みやすい社会にしていきましょう」
撮りながら笑ってしまった、熊本聾学校・手話落語の破壊力
イベント2日目は12時からのスペシャルステージに、9月の全国高校生手話パフォーマンス甲子園で優勝した2校が登場。そのパフォーマンスが素晴らしかったです。
まずは演劇・コント・ポエム部門で優勝した熊本聾学校による手話落語。
ネタの舞台は古いそば屋でありながらも、大谷翔平やインバウンド、NISAなど、今の時事ネタを手話で扱いながら笑いを取っていて、まさに会場からは爆笑の笑みが溢れていました!
昭和のコントっぽくズッコケたりも。めちゃくちゃ面白くて、写真を撮りながら何度も爆笑しちゃいましたよ。
出演した学生は、「手話の落語でみなさんに笑いを届けたい」とのこと。手話ならではの表現がまた面白くて良かったです。
学生は「来年のデフリンピックでは日本らしさを発揮できると思いますし、選手たちには大活躍してほしいです」とのこと。
なんとこの学生さんはデフ陸上の選手を目指しているとのことで、会場からは応援の手話拍手が!
難しい手話とダンスで優勝した大阪・久米田高校、圧巻のパフォーマンス
続いて、ダンス・歌唱部門で優勝した大阪・久米田高校の生徒たちが黒と茶色のエレガントな衣装で登場。
手話とダンスのパフォーマンスで会場を魅了しました。
リフトでステージの高いところから演じる圧巻のパフォーマンスにビックリです!
学生は「デフリンピックを通して世界中の方に手話ならではの良いところをもっと感じ取ってほしい」とコメントしていました。
ゲストで登壇したゆきりぬさんからは「これらのダンスで使用している手話は、日本語手話と国際手話のどちらを使っていますか?」との質問も。
それに対して学生は「一部では国際手話も取り入れています。手話もダンスもどちらも手を使うので、手話とダンスのどちらかに偏ると表現が難しくなっちゃうし、そのバランスが難しいです」と苦労している点も教えてくれました。
なお、会場のステージではこの企画に関わらず常に手話通訳のスタッフさんが何名もいて、声→手話、手話→声をリアルタイムで翻訳。彼らの活躍もすごかったです。
また、ステージ横の大型ディスプレイには文字による翻訳もリアルタイムで表示されていたのも助かりました。
世界一に挑め!フィッシャーズvsデフバレー日本代表
2日目の午後、デフバレーボール女子日本代表の中田美緒選手と長谷山優美選手とともにステージに登場したのはYouTubeなどで活躍中のフィッシャーズ。
フィッシャーズといえば、有明アリーナで行われた東京2020大会パラリンピック1周年記念イベントのなかで車いすバスケでもゲスト出演されていて、すっかり国際的なスポーツ大会の顔になった印象ですね!
今回も客席に入り切らないほどの観客が訪れ、からだを使って中田選手・長谷山選手とともに爆笑のステージを見せてくれました。
デフバレーボール対決では耳栓とイヤーマフを装着したマサイさんとンダホさんが参戦。
音がきこえないせいかマサイさんはボールに気づかなかったそうで、まったく動けずに棒立ち。
ボールがステージの照明にぶつかるアクシデントがありつつも、デフバレーボール女子日本代表チームが勝利しました!
続いてはデフバレーボールではコミュニケーションが大事とのことで、ボディランゲージで対決。
これにはジェスチャー役をシルクロードさんと中田選手が、解答役をモトキさんと長谷山選手が挑戦します。
6問連続で出題され、それにジェスチャーで答えるシルクさんの姿に会場が大爆笑。
予想していなかったのが中田選手のジェスチャーの良さです。ダイナミックな表現ですごかった(笑)
中田選手は「普段からやっている(コミュニケーションの)成果を出すことができました」
とのコメントに長谷山選手は「中田選手が上手かったので、すぐに見てわかりました。手話だけでなくて身振りとか想像力を働かせて活かせたかなと思います」
と笑顔でしっかりコメント。
負けてしまったシルクさんは「最初に俺がジェスチャーいけるぞって言ったのだけを切り抜いてネットニュースに書かないでくださいね!」と悔しさを見せていました。
このステージをきっかけにデフリンピックを知った観客も多いと思いますので、インフルエンサーや著名人のみなさんにはぜひどんどん活躍してほしいと思います!
パラ開会式のメンバー、新舞台をデフリンピックと同じ2025年11月から公演
そして、14時からは舞台『TRAIN TRAIN TRAIN』キックオフトークショーが行われました。
高い評価を受けた東京2020パラリンピック開会式の出演者やスタッフが再び集結し、今度はデフリンピックにあわせて2025年11月に舞台『TRAIN TRAIN TRAIN』を披露します。
そのキックオフイベントに、森山開次さん、和合由依さん(体調不良で欠席)、はるな愛さん、ウォーリー木下さん、栗栖良依さんが登壇。
東京2020パラの開会式・閉会式でステージアドバイザーを務めた栗栖さんが進行し、東京パラの裏話やこの舞台への意気込み、この日から始まった出演者のオーディション参加募集など、たくさんのお話を聞くことができました。
東京パラの開会式でのパフォーマンス出演に応募したタレントのはるなさんは、
はるな「何か表現者として参加したかったんですよ。パラの開会式のオーディションがあることを知って。私の弟が車いすなのもあって、応募させていただきました。オーディションではなぜか演歌を歌ったんですよ(笑)開催が延期してダメだと思ったけど、1年後に合否の連絡が来まして、合格と連絡を受けたときはすごく嬉しかったです!」
と当時を振り返りました。
栗栖「こっちとしてはみんな合格させたかったし、落とした人は本当になくなく・・・ですよ」と続けると、
演出と振付を担当する森山さんは
森山「(パラのオーディションは)コロナ禍だったのでオンラインだったんですよね。画面越しに何日もかけて応募者のみんなと会話したのを覚えていて、当時はオンラインに慣れてないのでみなさんアピールするのが難しかったと思うけど、画面の奥からものすごくアピールしてくれました」
森山「とくに和合由依ちゃんはすごくて。当時は中学生だったのにしっかりしてて、これはすごい才能と出会ったと興奮しましたよ。ユーフォリアムを演奏してくれたり、変顔や運動会のようすも見せてくれた。発見してしまったという喜びがありましたね!」
また、演出を務めたウォーリーさんは
ウォーリー「こんなにすごい人がいるんだと。ビックリさせられましたよ」
と、パラ開会式で“片翼の小さな飛行機”を演じた和合由依さんがオーディションに挑んだときのようすを語ってくれました。
では、2025年に公演される舞台『TRAIN TRAIN TRAIN』はどんな舞台になるのでしょうか。
森山「(パラ)開会式は飛行機だったので今度は列車だと。すぐにTRAIN TRAIN TRAINの絵を描いてみんなにこういう舞台をやらないかと話しました。時間がたってしまいましたが、数年たって企画が実を結んだことが嬉しいです。列車なのでつながりをイメージしています。和合由依ちゃんをイメージして先頭から汽笛を鳴らしている絵です」
栗栖「(森山)開次さんのこれを2時間のなかに詰めるのが大変で。シーンを選ぶのが大変でした」
そして、2025年公演の舞台『TRAIN TRAIN TRAIN』に出演してくれる人を募集するオーディションがこの11月よりスタート。
会場に来られなかった和合由依さんから届いた手紙が壇上で代読されました。
「東京パラ開会式で一般キャストの応募を知ったときは小6でした。最初は受かるはずないと思っていたけど、母の言葉をきっかけで応募しました。今でも練習風景が印象に残っていて楽しかったです。パラのあと、自分もアップデートされたのを感じました。もし演劇の世界に触れてみたいと少しでも思っていたら、ぜひ応募してみてください。今とてもワクワクしています。練習が始まるのが楽しみです」
と、『TRAIN TRAIN TRAIN』への応募に迷っている方へ熱いメッセージを発してくれました。
きっと素晴らしい舞台になるでしょうから、筆者もとても楽しみです!出演してみたい方はぜひ応募してみてはいかがでしょうか。
ららぽーと豊洲で体験できた展示ブース
会場では、デフリンピックやデフアスリートに関わるさまざまな展示を楽しむこともできましたよ。
こちらはデフスポーツ診断と手話コミュニケーションが試せるブース。学生団体のおりがみさんが実施していました。
また、デフデフマーケットでは手話に関する書籍や、手話の手を型取ったクッキーなどのお菓子、はちみつやジュースの販売も!
デフリンピックで選手が頑張れるよう、応援メッセージを送れるブースもあって、どれも列を作るほど大盛況でしたよ!
ららぽーと豊洲の館内では、外国語も含む言葉を翻訳してリアルタイムで文字にして表示するディスプレイのデモや、陸上競技などで実際に使われるスタートランプの体験も。
筆者は先日体験したのですが、やっぱり素人にはなかなか難しい(笑)
襟元や腕に装着し、音やリズムを振動で楽しむOntenna(オンテナ)。これもスポーツや音楽ステージにおける新しい楽しみ方のひとつだと感じました。
このほか、VRヘッドセットを使用し、きこえない・きこえにくい世界を疑似体験できるコーナーも人気でした。
東京五輪のように選手たちの熱い戦いを応援しよう!
実はこれでも今回のイベントの内容としては半分くらいしかレポートできていないんですが、とても充実して内容の濃いイベントだったのが正直なところ。筆者ひとりでレポートするのはこれが限界ですかね(泣)
これからも1年後の大会開幕に向けてさまざまな応援イベントが行われるでしょう。
あとは皆さんご自身でデフリンピックのことをちょっと調べてみたり、競技や選手について気になったことを検索してみたり、少しでもいいので興味を持ってくれたらこのレポートを書いた甲斐があります。
コロナ禍では有観客での応援ができなかった東京五輪。今度こそ日本勢が頑張れるようみんなで応援しましょう!
東京2025デフリンピックは2025年11月15日に開幕です!
※応募締切:2025年1月31日