2017年5月20日(土)、豊洲市場の見学会が行われました。見学会は事前に参加者を広く募集したものではなく、豊洲エリアの一部住民や商店・事業者などを対象とし、どちらかというと住民に向けた情報公開の場というイメージが強いものでした。とよすとでは今回の見学会に参加させていただくことができ、豊洲市場の内部を取材することができました。
どうしてマスコミは豊洲市場の“正の部分”を取り上げないのか。以前よりは報道の仕方が良い方へ変わってきていることは感じているのですが、それでもまだまだ“負の部分”が大きく強調されていることに憤りを感じています。今回、豊洲市場の見学で撮影できたたくさんの写真とともに真実をお伝えしたいと思います。
写真を多めで、本文はメモ程度とさせていただきましたが、多くの方に伝わると嬉しいです。
まず、管理施設棟にて今回の見学会についての諸注意や豊洲市場の現状などが参加者向けに解説されました。
豊洲市場 見学ツアーについて
東京都の職員による説明は以下のとおり。
今回、豊洲の人を対象に見学ツアーを開催することになった。広い市場なので、今回のツアーではエリアを限定し、水産物を扱う6・7街区の売り場をはじめとした各施設を見学する。仲卸店舗の間口が狭いとかスロープのカーブがきつくて車両が曲がりきれないといった話があるが、その真の姿を見てもらう。
地下ピットは階段が狭くて段差があったり照明も少ないことから今日はスライドで説明。土壌汚染の報道では市場だけでなくあたかも豊洲全体が汚染されてるとの印象を与えていることから、マスコミには正確な報道をしてもらえるよう東京都は今後も正確な情報を提供する。豊洲地区の人にも情報を提供していきたい。
地下ピットの説明について。地下ピットは給排水の施設。2016年12月から行った排水のおかげで水は溜まっていない。全ての施設の地下ピットでドライな状態。写真は今週(2017年5月15日の週)撮影した直近の状態。
豊洲町会 小安町会長のお話
4月に関係者が集まり、市場見学を早くやろうという話になって今回開催となった。食を楽しめる賑わいの施設や交通網の整備などを条件に我々も協力してきた。しかし、(本来開場する)11月7日を目指していろいろなイベントを考えてきたが、それができなくなり、潤うはずの経済も停滞してしまった。
そして、風評被害。(この日の)朝、小池知事は「豊洲の問題」とフリップを書いていた。汚染が豊洲全体だという心配につながりかねない。福島の原発事故後、こちらに来ている子供がいじめにあっているという事態が発覚した。同じように、豊洲から豊洲外に出ると、汚染から来たのか?と言われる子供もいる。また、豊洲外の私立校に入学する子供もいじめられる可能性もある。一生子供たちはそう言われ続けるかもしれない。
築地市場が老朽化してるところを悩んだ末に、豊洲は移転先として選ばれた。完全に出来上がった豊洲市場を今から壊して、ホテルやマンションにしても誰も利用しないと思う。この施設を十分に見て感じてもらったことを、皆さんには訴えていきただきたい。この見学会では市場全部を見るとそうとうな距離があるので、エリアを絞って見学していく。
今回の見学会にはおよそ200人の参加者がいらしたようです。
見学して見たこと、感じたことをレポート
ここから実際の見学になります。以下、メモと写真です。
管理施設棟の3階へ。
ゆりかもめの市場前駅からはこの3階に直接来ることができます。
水産物の移動は移動は、トラックで正門→水産卸売場のバース→荷降ろし→セリ→水産仲卸→店舗に販売→仲卸売場からトラックで出て行く、といった物流の流れができるとのこと。
続いて、水産卸売場棟へ移動します。5階建て。
一般見学できる通路には下のような展示がところどころに見られます。
水産卸売場棟は1階でマグロや活魚を扱う。2階はウニなどのセリが行われる。4階に荷物が集まり、全国に配送される。建物の左右には大型のトラックがつけれる施設になっている。3階は見学者通路があります。
見学通路へ。緑の床はマグロのセリ場。ここからセリが見学できる。
白い床の方はイワシなど活魚の卸売場。相対取引などがここ↓。
ところどころに手洗い所があり、労働者は清潔な状態で仕事ができます。
通常、見学が可能なのはこのガラス内(↓)。今回の見学会では、開場後には立入不可能となるマグロのセリ場(緑の床)に降りて見学できました。
広い。デジタルサイネージも。
冷気が逃げないように、センサーで開閉する自動の高速シャッターが設置されています。これにより熱による影響を受けず、鮮度を保てます。また、別の場所にはエアーカーテンもあり、ゴミや虫の進入を防ぐこともできます。
仲卸さんが共通で使えるマグロの解体マシン。店舗が狭くて解体マシンを置けない方向けに自由に使えます。
とても涼しくて温度管理がすごい。実は後で知ったのですが、この見学会ではクーラーがオフだったとのこと。それなのにすごく涼しいのは豊洲市場が耐熱性能の高い施設だからだそうです。
とても涼しくて、温度管理がしっかりできていますね。暑い夏場もここでなら確実に鮮度を落とさず鮮魚を扱えるでしょう。きっと働く方々の熱中症も防げます。 #豊洲 #豊洲市場 #豊洲市場見学 pic.twitter.com/3Y2QeJynum
— とよすと (@toyosu_tokyo) May 20, 2017
そうそう、この床にあるマンホールがユニークでした!「粋」「目利き」「魚河岸」なんていう文字が!
しばらく進み、「活魚売場」へ。
奥に見える青いカゴの水槽は活魚を置いておくところ。
すぐ隣には、発泡スチロールをリサイクルのためにまとめる加工をする施設も。正面と左手の建物でまとめ、海外でリサイクルへ。右手の建物では新品の発泡スチロールを販売する施設(↓)。
ここからは豊洲市場で浮上しているいくつかの問題について、実際に目で見て確かめる見学になります。
豊洲市場の地下構造の解説では、市場全体は鉄板で囲んでおり、地下水が外部に出て行かないようになっているという説明がありました。実は敷地全体がプールのようになっているんです。しかし、プール状なので雨が降ると地下水が溜まって水位が上昇してしまうので、これが一定以上上がらないように制御するのが地下水管理システムです。もし地下水に有害物質が含まれている場合には、キレイに除去して下水道に流すのがこのあとで見学する地下水管理棟の大きな役割です。
こちらがモニタリングの井戸。細い筒になってる。
ここ最近のモニタリング調査で地下水から有害物質が検出されるようになったのは、地下水管理システムを稼働させたタイミングと重なっています。地下水管理システムを稼働させたことで地下水が移動し、今までどこかにあった有害物質を含む地下水がモニタリング井戸まで流れてきて、それが検出されたとみられています。
地下水ポンプ。10メートルの深さがあります。58機のポンプがあるのだそうです。
ポンプでくみ上げた地下水は排水施設へ送られます。
よくマスコミで大きく報道されるのは、ピンポイントでくみ上げた地下水に有害物質が基準値を超えて検出されたものです。しかし、実は敷地全体では一度も基準を超えていないそうです。つまり、市場全体では大丈夫なのに一部分だけの結果が大きく報道されてしまい、都の職員も困惑している。
そもそも、地下水は排水しているので、まったく使われない水だから関係ありません。そう、魚にはまったく使用されない水なんです。
なお、基準値の100倍のベンゼンが検出されたのは、青果棟の駐車場。建物下でもなければ、水産棟でもありません。この事実を知った筆者は、マスコミがこれまで報じてきた行き過ぎた報道に怒りを感じました。
地下水管理システムへ。
先程の地下水ポンプで送られてきた地下水の有害物質をここで検査。有害物質があれば濾過してから下水へ流す。市場内には3つの管理システムがあり、1日に合計600トンの濾過が可能です。要するに、たとえ敷地内の地下水から有害物質が検出されてもキレイに濾過されているんです。
水産仲卸売場棟へ。
ターレーがたくさん走っても問題のない、とても幅のある通路です。右奥の方にもあります。
すでにたくさんの仲卸業者が店舗の準備をしていました。各店舗シャッターつき。断熱性能が高くて、クーラーを入れていないのにすごく涼しい。
水産仲卸売場棟。すでにたくさんの店舗さんが準備されてます。断熱性能が高く、今はクーラーを入れてないのにすごく涼しいです!各ブースにはシャッターもあり、安全性も高い。 #豊洲 #豊洲市場 #豊洲市場見学 pic.twitter.com/Gwm4vbqZmW
— とよすと (@toyosu_tokyo) May 20, 2017
店舗の敷地と通路にはちょっとした段差があり、店舗と移動エリアがしっかり分けられています。
当然、禁煙ですよ。
積載量6600kgの巨大エレベーターに乗って、4階に移動。さらにそこから階段で屋上へと行きました。
この水産仲卸売場棟の屋上が本当に素晴らしい!「緑の丘」という屋上の緑化エリアです。
こちら、誰でも入れます。もちろん、開場されればの話ですが。
手前の赤いタイルの歩道は「豊洲ぐるり公園」。市場をぐるりと囲むように歩道があります。桟橋もあり、ここに船がつけられます。奥は東京オリンピック・パラリンピックの選手村を建設中の晴海エリア。
また、豊洲ぐるり公園には晴海側にエレベーターがあり、直接この屋上に来ることが可能です。エレベーターと「緑の丘」をつなぐ通路はちょっとした絶景を楽しめるスポットになりそう。
こんな湾岸の素晴らしい景色が一望できます。
芝生エリアが広いので、ここでピクニックもできちゃいますね。
ここに来れば、左から右に目を移すだけでレインボーブリッジ〜晴海・豊洲を眺められるので、一大観光名所になるような気さえします。可能性は十分にあるかと。
緑地エリアでフリーマーケットなどのイベントが開催されれば盛り上がると思うので、一応、職員の方にはイベントスペースの貸出開放についてもご提案もしておきました。
水産仲卸売場棟の中には豊洲市場内のプロショップ「魚がし横丁」というのがあります。し、知らなかった。。。
「魚がし横丁」では青果・妻物、漬物、玉子焼き、よせもの、湯葉・こんにゃく、海苔・お茶、乾物・珍味・缶詰・その他食品、鶏卵・加工肉、鰹節、塩・砂糖、惣菜・佃煮、米・糀、酒・チーズ、包装用品、刃物・厨房調理器具、長靴・衣料・ゴム製品・雑貨、はかり・レジスター、漁具・船用品、陶器・せともの、くすり・食品衛生用品、味噌、書籍が販売されます。扱っているのはプロ仕様の商品ということでしょうか。
さらに進みます。
ターレーが曲がりきれない、という指摘がされた疑惑のヘアピンカーブがここ(↓)。
実証実験では時速8〜15kmで走行しても余裕で曲がりきれたそうです。なお、ターレーは15km以下で走行することが決められています。
例のヘアピンカーブ。市場内の決まり(?)である時速8〜15キロ程度の走行なら、ターレーは余裕で曲がれるとのこと。実証済み。 #豊洲 #豊洲市場 #豊洲市場見学 pic.twitter.com/CvWQOqVQNk
— とよすと (@toyosu_tokyo) May 20, 2017
ここを見たあと、見学会は自由解散となりました。
見学してみてわかったのは、やはりマスコミは負の部分しか報道していないということ。どうして地下水が上がってくるのか知らない人は多いと思うし、市場で問題があったら解決する設備があることも皆さん知らないと思います。築地vs豊洲といった構図を描きたくて仕方ないマスコミは真実を報じる気持ちがないのでしょうか。
筆者は見学に際し、写真を撮りつつメモを書き、同時にTwitterにも投稿をしていたのですが、疑問に思ったことを可能な限り説明員さんに何度も質問し、なるべく正しい情報を集めたつもりです。
感情に任せて移転反対を貫こうとする人々とは違い、実際に現地を見せてひとつひとつ丁寧に解説し、我々の抱える疑問点に正面から向き合って回答してくれた職員さんにたいへん感謝しています。
Twitterでも書きましたが、豊洲市場は外から見ただけじゃわからない想像をはるかに超える素晴らしい設備です。今すぐ移転しても何ら恐れることはないでしょう。
築地市場で働く人のなかには移転反対の方たちばかりが注目されていますが、移転を心待ちにしている人もたくさんいます。豊洲市場を散々悪く言っている築地市場のごく一部の人はこの豊洲市場の良さをはやく知るべきです。
そして、間違いなく豊洲市場は世界に誇れる良い市場になると確信できましたので、開場したら全国の皆さんにはぜひ豊洲を訪れてたっぷり見学してほしいと思います!屋上からの景色は本当に絶景ですよ(^^)
上の写真は豊洲市場のお隣に整備中の豊洲第四公園(仮)です。オープンとなれば、左手にレインボーブリッジがドドーンと見える絶好のロケーションとなるでしょう。
とよすとではこれからも豊洲の良いところや豊洲市場の動きをお届けしていきますので、ぜひ皆様のお時間がございますときにTwitterやFacebookページをチェックしていただけたら幸いです。豊洲市場が良い方向へ進むよう、応援していきたいと考えています。